私たちは、変化する静電気に対する電子機器・装置・部品の信頼性と安全性を保証する検査手法を提供します。

Test & Measurement Technology

帯電した人が周辺を通過するだけで電子機具・装置が誤動作することを知っていますか?

電子デバイス、電子機器・装置の周辺で静電気を帯びた人体、物体が移動する事によって、それらとの間に直接的な静電気放電(ESD)が発生しなくても、誤動作を生じる事がありますが、この事象は殆ど知られていません。
冬の乾燥期に防寒服を着用して移動する場合、人体は10〜15kV程度、着衣はそれ以上に高い電位に帯電する事があります。このように帯電した状態で電子機器・装置の周辺を通過移動したり、あるいは電子機器を操作する事によって、直接対象機器に対して放電が起きていなくても、機器が誤動作する可能性がありますが、現状のESD耐性試験では全く考慮されておらず、問題の認識もされていないのが実情です。
特に人命にかかわるような装置や高信頼度の動作を要求される機器などは、誤動作の可能性を極力排除すべきです。

 誘導帯電とは?誘導帯電はどのように発生するのか?

静電気は絶縁物にも導体にも発生します。静電気は主に摩擦と誘導によって発生します。導体に発生した静電気はその導体を接地すれば容易に除去できます。しかし接地されていない、いわゆる浮動導体(人体も静電気的には導体で歩行時の人体は浮動導体)は静電気を除去出来ないばかりでなく、帯電します。人体は導体ですが、着用する衣服は絶縁物である場合が多く、しかも羊毛、化学繊維などの衣服の材料の中には静電気を発生する能力が高いものが多くあります。着用して移動動作をする事によって摩擦等により帯電電荷が増加します。この状態は自身の周辺の静電界を変動させその近辺にある浮動導体に電荷を誘導します。このように、静電気を帯びた物体が移動したり、その静電電位が変動する事によって、周辺の物体の静電電位が変動する事を誘導帯電と言います。
また、椅子に座って操作しているオペレータが、高所のスイッチ等を操作する為に立ち上ると、その人の持つ静電容量が急に減少し、帯電電荷量は変わらなくても、静電電位が変わります。静電容量が仮に1/3になれば電荷量一定でも電位は3倍になります。椅子から立ち上る動作にとって、衣服と椅子の座面との間の摩擦により摩擦帯電も起こりますから、人体の電位は立ち上るという動作により、3倍以上に変化します。従って、このような動作も、周辺の浮動導体へ誘導帯電する原因となります。
静電気の発生を抑えるために、接地(リストストラップ、ESD椅子)、導電靴、導電衣服、導電床等を使用すると大きな効果がありますが、特に静電気放電の発生を抑制すべき特定の環境に限られます。

 誘導ESDとは?誘導ESDはどのようにして発生するのか?

誘導帯電を生じる環境の中に、他と電気的に接続されていない金属(例えばビス等)があると、これは誘導帯電により、周辺の電界変動の影響を受けて帯電します。そして、その近くに、その他の金属(例えば、接地された又はされていない金属シャーシ)が有って、その間隔が0.1o程度以下であると、非常に危険です。一般的に2つの導体間の絶縁電圧はパッシェンの法則により導く事が出来ます。
1気圧、20℃の環境では0.1mmの間隙では約1000Vの電位差が生じると両者間に火花放電が発生します。私達の実験によると3〜5kVに帯電させた絶縁板を約60ミクロンの間隙(この間隔では放電電圧は約750V)を持つ2つの浮動銅板より2〜5cm離れた場所を通過させると両者間で火花放電を発生しています。これが誘導ESDです。

 誘導ESDによるトラブルが発生する環境

  • 周辺に静電界を伴って移動する帯電物体があるか、又は移動していなくでも電位が急激に変化する帯電物体が存在する
  • 機器・装置の内部、表面、又は周囲に浮動導体とそれに近接(通常は1o以下、0.1mm以下になると極めて危険)する他の浮動又は接地導体が存在する
  • 上記近接間隙の近傍に電子回路があるか、又は電子回路へ接続されている信号伝送線路が近傍を通過している

 誘導ESDに対する耐性テスト手法

誘導ESDに起因する誤動作に比べ、電子デバイス、電子機器、電子装置等が直接的なESDによって、壊れたり、誤動作を起こすという認識は高まってきており、特に、電子デバイスでは、ESDに対する対策なしでは電子機器・装置の生産が事実上不可能です。
そして、その対策手法もほぼ確立されています。当社では、IC等の電子デバイスのESDに対する耐性を評価する試験機を30年以上にわたって提供しております。また、電子機器・装置の設計、生産、検査に関しても、製品、半製品等への直接的、間接的なESDに対する耐性の試験には既に確立した試験評価法があります。
これらは全て、デバイス、機器、装置と外具との間の直接の、あるいは周辺でのESDによる障害に対する耐性をテストします。テスト手法は国際規格、IEC61000-4-2を代表的な規格とする諸規格で決められています。

しかしながら、誘導ESDに対する耐性テスト手法は残念ながらまだありません。そこで当社が開発した、i-ESD-10Aを使って放電が発生している事が検出出来たら、事前に対策をしておくべきです。

新製品で工場出荷する時には、誘導ESDが発生していない場合でも、現場への据え付け、設置、定期点検、修理後のカバー、ケース、扉等の締め付け不良、建てつけ不良等で近接間隙が残される可能性が予想できる場合には、事後に誘導ESDが発生しない事を確認して作業を終了する等の注意が必要であると考えます。

 取り組み

当社では、平成23年2月に経済産業省の中小企業新事業活動促進法に基づく「異分野連携新事業分野開拓計画」に関する認定を受けて、上記のような環境での電子機器・装置、電子デバイスの堅牢/安全性を確認し、もし安全性が十分でない場合には対策を講じる事が出来る製品、手法を提供する事業を開始致しました。

静電気、静電気放電に関するトラブルに関しては、これまでもその原因究明や問題解決に関する種々の努力が継続的になされ、その成果には目を見張るものがありますが、とはいえ、まだまだ原因不明のトラブルも多く存在しています。中には静電気、静電気放電とは無関係なトラブルが、静電気、静電気放電のせいにされているものもあるかもしれませんが、誘導ESDのように、静電気放電に起因しているにもかかわらず、単なる一過性のトラブルとされて放置されている場合も多くあると考えます。この種の問題は、原因究明できる可能性のあるものを地道に一つずつ解決して、範囲を狭めてゆく以外に根本的な解決手法は無いと考えます。私達の取組みが、少しでも問題範囲の縮小に役立てる事を期待しております。

モデルi-ESD-10A、誘導ESD耐性検査装置は本事業で開発した最初の製品です。今後種々の形状の電子装置、機器に対応すべく製品系列、バックアップ体制を充実してまいります。なお、これら製品に関しましては全て特許出願済みです。

    連携体参加企業

  • 東京電子交易株式会社
  • 株式会社インパルス物理研究所 ”http://www.impulse-physics.com ”
  • 有限会社双明通信機製作所 ”http://www.so-mei.co.jp ”

商品の紹介

ESDイベント・ディテクタ
i-ESD10Aシリーズ
ESDイベント・ディテクタ
誘導ESD耐性試験器
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